平成20年度 第24回素形材産業技術表彰
経済産業大臣賞 「プロセス制御と特殊金型機構による高品位ダイカスト技術の開発」
開発代表者
- アイシン高丘株式会社 初山 圭司
共同開発者
- アイシン高丘株式会社 新美 富男・澤田 義政・伊藤 浩一・金曽 誠・脇上 一也
<技術概要説明>
自動車の自動変速機を構成するオイルポンプ部品は複雑形状をもち、且つ高品位を求められるため、砂中子を用いた鉄鋳物により生産されるものであった。通常のアルミダイカストでは成形不可能で有り、これまでダイカストによる大量生産の例は見なかったが、以下のプロセス制御と特殊金型機構による高品位ダイカスト技術の開発により、オイルポンプの量産化に初めて成功した。
(1)砂中子レスが可能な特殊金型構造の開発(日本、米国特許取得)
(2)合金成分、凝固最適化による表面硬度、強度の制御
(3)高精度溶解と断熱性潤滑剤適用による破断チル、酸化物の除去
(4)真空鋳造および充填初期の層流充填、ショックレス射出、充填後期の超高速射出制御による鋳巣発生防止
(5)湯流れ、凝固シミュレーションによる湯流れおよび指向性凝固の確保
本開発技術によるオイルポンプ部品の特徴は、従来の鋳鉄系材料品と同等以上の設計強度、部品機能を維持しながら、50%という大幅な軽量化に成功している点である。
中小企業庁長官賞 「保持炉を水平分離したアルミニウム低圧鋳造法の開発」
開発代表者
- 株式会社東京軽合金製作所 山下 和秀
共同開発者
- 株式会社東京軽合金製作所 山田 忠郎・菅原 祐一・戸柱 慶二郎・伊佐山 忠弘・原口 友昌
<技術概要説明>
本技術は、低圧鋳造法のコスト競争力を高めることを目指し、抜本的に鋳造機の構造設計、条件制御方法を見直し開発したもので、以下の6つの特徴を持つ。
(1)保持炉と金型の分離;金型が炉体から直接受ける熱を抑えた。製品凝固時に大きな冷却速度が得られ、鋳造サイクルが35%短縮された。
(2)定湯面化による一定圧力鋳造;ショット毎の定量給湯により、定湯面、高位置湯面での鋳造を可能にし、鋳造圧力の安定と溶湯移動による湯温低下、酸化を最小に抑えた。安定充填と高い溶湯表面静浄度が維持され、溶湯の流動性が良化し最小肉厚3.5㎜の薄肉品を安定して生産できるようになった。
(3)溶湯制御弁付加;溶湯補給時の鋳造停止が無く連続鋳造が可能なため、生産性が向上(稼働率90%以上)した。又、金型温度が安定しているため品質が安定した。
(4)保持炉の連続脱ガス;脱ガスパイプによる連続脱ガスにより、安定した溶湯品質が得られ、ピンホール、酸化物巻き込みの低減が実現した。
(5)加圧室容積の最小化;加圧容積、シール面積が減少し気密性が確保され、応答の速い高精度の加圧特性が得られ、充填制御精度が向上し薄肉品の安定生産が可能になった。
(6)ストーク径拡大による鋳造方案自由度の向上;任意の位置に最適なゲートを設置する事が可能となり、安定した指向性凝固が得られ健全な鋳物が生産できた。又、5kgから最大13kgのシリンダーヘッド鋳物の2個取り生産が可能となった。
経済産業省製造産業局長賞 「環境を考慮した紙ベース鋳造用湯道管の開発」
開発代表者
- 花王クエーカー株式会社 津浦 徳雄
共同開発者
- 花王株式会社 高城 栄政・小林 洋昭・竹村 博明・吉田 昭・渡辺 洋一
<技術概要説明>
当技術は、循環型社会を目指してリサイクル可能な紙原料に着目し、表面平滑性/強度に優れプラスチック並みの3次元形状を成形可能な成形技術が開発され、この紙成形技術に、材料技術とそれらの機能材料を繊維に固定化する技術を融合させることで、1400℃の溶湯に耐えうるこれまでにない紙ベースの鋳造用湯道管の開発に成功した。これまで主流であった陶製湯道管に比べて軽量(約1/10)であり、嵌合(かんごう)可能で作業性に優れているばかりでなく、注湯後の廃棄物の量が大幅に削減でき、環境にも優しい(廃棄物量は約1/16)。
また、型ばらし後の砂に陶器の破片が混入することがないため、再生砂品質が向上するばかりでなく砂再生設備に対するダメージも軽減できる。既に国内では、φ25、φ30、φ50、φ70mmのストレート、エルボ、チーズを鋳鉄鋳物用に販売している。これまで湯道に発泡ポリスチレンを使用していたフルモールド分野でも利用されており、鋳物品質向上などの効果が期待できる。
財団法人 素形材センター会長賞 「高温耐摩耗性に優れたアルミニウム青銅鋳物合金の開発」
開発代表者
- 道前工業株式会社 真鍋 隆太
共同開発者
- 株式会社西条産業情報支援センター 林 洋一郎
- 新居浜工業高等専門学校 谷 耕治
<技術概要説明>
製鉄所の熱延設備などで使用する摺動部品(ブッシュ、ライナーなど)には、銅鋳物合金が使われているが、摩耗が早いため、精度維持のための型調整に時間を取られたり、取り替え周期が短くなったりするなど、稼働時間に制約があった。
開発合金は、使用される環境を想定し、強さ、硬さ、伸びの特性をバランス良く同時に成立する合金組成を検討し耐摩耗性、耐焼付性に優れたものを見出すことで実現した。すなわち、JIS規格のアルミニウム青銅鋳物をベースに、添加元素の探索を実施し量を微妙に制御し、従来のアルミニウム青銅鋳物よりも2~3倍に寿命が延びた、高温耐摩耗性に優れたアルミニウム青銅鋳物合金を実現した。
今後、摺動部材として、寿命延長による省資源だけでなく、稼働時間が長期化するため生産性アップとメンテナンス負担の軽減に繋がり、利用者に多大の利益をもたらすことが期待される。

