平成22年度 第26回素形材産業技術表彰
経済産業大臣賞 「高機能・低コスト自動車用高精度サイクロイド減速ギヤの開発」
開発代表者
- 株式会社サイベックコーポレーション 大久保 匡浩
共同開発者
- 株式会社サイベックコーポレーション 平林 健吾・笹川 淳・長田 直樹・田中 謙一・白鳥 達也
<技術概要説明>
自動車の低燃費・電動化が進行する中で、モーターを小型化する動きが活発化してきており、小型のモーターから大トルクを得るために、コンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機が用いられているが、従来のサイクロイド減速機のギヤは切削加工により歯形を加工しているため高価なものとなっている。本開発では、厚鋼板からの冷間鍛造順送プレス加工により、立体形状の高精度サイクロイドギヤの成形技術を確立し、サイクロイドギヤの加工時間短縮と低コスト化を実現した。開発内容は、①プレスステージ間での応力影響が少ない工程設計、②ギヤ面粗度を向上させるための工法開発、③立体形状成形するための金型部品の加工技術の確立である。現在、自動車のエンジンのバルブ制御用減速機のギヤとして搭載されており、減速機の軽量化、高効率化に貢献している。今後、電気自動車の量産化が加速するとともに、自動車駆動系への適用も考えられることから、本開発ギヤの適用範囲は広がるものと期待できる。
中小企業庁長官賞 「シングルバー片手フィンガー三次元高速サーボトランスファー装置の開発」
開発代表者
- 型研精工株式会社 濵田 一男
共同開発者
- 型研精工株式会社 橋本 政吉・五十嵐 勉
<技術概要説明>
金属プレス加工製品の製造に多く採用されている順送プレスには、材料歩留まりが低いという問題がある。一方、トランスファープレスは材料歩留まりが高く、材料費の削減による低コスト化に資する優れた加工法である。しかし、従来のトランスファー装置は、加工スピードが20~30spm と遅く、大型で専用機械化しており、高価であるため、普及していなかった。
本開発技術は、トランスファー送り装置について①構造のシンプル化、小型化、フィードバーを一本且つ極力短くし、軽量化を図って加工スピード100spm を達成、②コンパクト化し、プレス機械から完全に分離し、既存の汎用プレス機械や、金型に装着可能とした。③製品を掴んで運ぶフィンガーは、抜き、曲げ、絞り製品等あらゆる製品の安定保持を実現した。さらに従来機より低価格化を実現した。
本装置の開発は、材料歩留り20~30%向上による使用材料の削減と共に、高精度製品の高速生産、低コスト化を実現するトランスファープレス加工の普及に大いに貢献する。
経済産業省製造産業局長賞 「車載リアクトルコア用高密度・低損失圧粉磁心の開発」
開発代表者
- トヨタ自動車株式会社 杉山 昌揮
共同開発者
- トヨタ自動車株式会社 山口 登士也・大河内 智 岸本 秀史
- 株式会社豊田中央研究所 服部 毅
- 大同特殊鋼株式会社 齊藤 貴伸
<技術概要説明>
従来の圧粉磁心では達成困難とされていた電磁鋼板磁心レベルの磁気特性(鉄損、磁束密度)を実現する製造技術を開発し、ハイブリッド自動車の昇圧システムに搭載される圧粉磁心製リアクトルの量産化に世界で初めて成功した。
原料粉末の形状制御技術及び粉末表面への高耐熱絶縁コーティング技術による低鉄損化(約40%)及び粉末の高密度成形技術による高磁束密度化(約35%)を達成。さらに、圧粉磁心製リアクトルの製品化の大きな課題であったコアの歪振幅による振動騒音に対して、コアから車体への振動伝達を遮断する製品構造を新たに採用し、従来モデル以上の静粛性を確保することに成功した。以上により、電磁鋼板製コアからの代替が可能となり、コア製造工程数削減(6⇒2 工程)及びネットシェイプ化による画期的な素形材コスト低減(従来比 約1/3)を実現した。本技術はハイブリッド自動車、電気自動車等の電磁気ユニット部品(モータ等)への適用拡大が期待される。
財団法人素形材センター会長賞(6件) 「プレス成形法による二重管式エキゾーストマニホールドの開発」
開発代表者
- 株式会社住友金属直江津 渋谷将行
共同開発者
- トヨタ自動車株式会社 五十嵐昌夫・若松 仁
- 株式会社三五 岡田 登
- 住友金属工業株式会社 中澤 嘉明・西山 佳孝
<技術概要説明>
二重管構造をした自動車のエキゾーストマニホールド(エキマニ)の内管に、難加工性ながら耐熱性に優れるステンレス鋼板を適用することにより、部品の薄肉-軽量化と排気ガスの清浄化を達成した。 この鋼板は火力発電設備の高温構造部材として開発された高性能な耐熱合金だが、高強度の難加工材のため、複雑なプレス成形が要求されるエキマニには採用することができなかった。
本開発では、数値解析を駆使して、形状及び成形を最適化したプレス加工法を開発することにより、エキマニへの適用を実現した。
これにより、従来の耐久性を維持したまま25%の薄肉化を達成した。さらに、エキマニの熱容量の低減は、冷間始動直後に排出される排気ガスの清浄化に大きく貢献した。エキマニへの高耐熱ステンレス鋼板の適用は、燃料消費効率の改善のために上昇する排気ガス温度への対応を可能とし、自動車の環境性能向上への寄与が期待される。
「薄肉大型車体構造部品用マグネシウムダイカスト技術の開発」
開発代表者
- ヤマハ発動機株式会社 小池俊勝
共同開発者
- ヤマハ発動機株式会社 稲波 純一・鈴木 敦・塚本 健二・鈴木 貴晴
<技術概要説明>
高真空ダイカスト鋳造技術と溶湯管理技術、高耐食表面処理技術を新たに開発し、従来は不可能であった薄肉(2mm)、大型(1m)、高強度(比強度アルミ比120%)かつ外装に適用可能な耐食性を兼ね備えたマグネシウムダイカスト技術を開発し、量産二輪車の車体部品に実用化した。
マグネシウムは実用合金中で最も比重が軽く、資源も豊富に存在することから、輸送機器業界においても次世代の素材として期待されている。従来は、車体部品に高真空アルミニウムダイカスト技術により製造した高品質な薄肉大型鋳物を積極的に採用してきたが、本開発ではマグネシウムを採用した。従来の設計・製造技術をマグネシウムの特性に合わせて最適化するとともに、湯回りを向上させる鋳造技術、耐食性を確保する溶湯の成分管理技術と表面処理技術を新たに開発し、溶解から鋳造、表面処理に至るまで一貫で取り組んだ。2008年に量産モーターサイクルのリアフレームに実用化した。
今後は、自動車を含めた量産輸送機器の機能(軽量化・コスト)と環境性能(燃費・リサイクル性)を高いレベルで両立させる技術として広い適用が期待できる。
「ダイカスト製品の鋳造不良を低減する金型ディンプル加工技術の開発」
開発代表者
- 新東工業株式会社 平野雅雄
共同開発者
- 新東工業株式会社 堀部 喜学
- 美濃工業株式会社 大池 俊光・桃原 満紀
- 水谷産業株式会社 吉田敏夫・森 義昭
<技術概要説明>
ダイカスト業界では「鋳造不良の発生による製造コストの増大」の解決が課題とされており、本開発ではダイカスト金型に最適な表面の形状を創生することで鋳造不良の低減に成功した。
本開発では、ダイカスト金型表面に複数の特殊なディンプルを形成する表面加工法を確立し、実際の鋳造を通して鋳造時に発生する「はがれ」、「湯じわ」、「焼付き」などの鋳造不良が約1/2 に低減されることを実証した。また副次的な効果として加工表面近傍には残留圧縮応力が付与されており、金型の耐ヒートクラック性の向上効果も確認された。
実用化した昨年12月から今年9月までに100社を超えるダイカスト企業に導入され、不良削減による製造コスト削減及びCO2 排出量の削減に大きく貢献している。
「急速加熱冷却を可能とするプラスチック成形用電鋳金型の開発」
開発代表者
- 江南特殊産業株式会社 伊達日出登
共同開発者
- 江南特殊産業株式会社 野田 泰義・大山 寛治
<技術概要説明>
微細形状の成形に適したニッケル電鋳のメリットを活かし、さらに進化させた射出成形金型MPM金型(Metald Piping Mold の略)を開発した。
金型構造は、射出成形金型のキャビティ側をニッケル電鋳で製作し、裏面に温調用配管をニッケル電鋳型裏面形状に沿わす形で一体化し、さらに金型強度を増すためにニッケル電鋳型裏面を特殊硬化コンクリートで金型を補強している。この金型は金型裏面の温調用配管に熱媒体を通すことにより約300℃までの加熱が可能である。急速加熱、急速冷却が可能で、成形サイクルを10%短縮し、成形した製品は、ウエルドレス、フローマークレス、塗装レスも可能である。
MPM金型は、従来型では困難なデザインである絞模様や微細模様の射出成形も可能になり、さらに難流動性(炭素繊維複合材料)の成形材料や薄肉製品の成形も可能である。MPM金型は、省エネルギー性に優れ、成形品は高品質化、薄肉軽量化、強剛性化を実現する新たな射出成形金型である。
「鋳鋼鋳物の焼着を防止する鋳型技術の開発」
開発代表者
- 株式会社特殊製鋼所 土居 康純
共同開発者
- 株式会社特殊製鋼所 井戸 啓彰
- 伊藤忠セラテック株式会社 牧野 浩・村田 証一・安川 昇吾・中川 揮
<技術概要説明>
鋳鋼鋳物の製造過程において発生する主な鋳造欠陥として焼着欠陥が挙げられる。焼着欠陥が発生するとガウジング処理等の後加工処理が必要となるため、その低減が切望されている。一方、回収性に優れる球状人工砂は新たな鋳型材料として有望であるが、フランプロセスで用いる場合、焼着欠陥が発生しやすいという欠点があった。
本開発は、球状人工砂を用いたフラン鋳型に球状酸化鉄を添加することにより焼着欠陥を完全に防止するという鋳型技術開発である。
本開発により、大物鋳鋼鋳物の製造において、欠陥の大幅な削減を実現し、工数、コストの低減を実現した。
「連続溶融めっき鋼板製造ライン用大型セラミックスロールの開発」
開発代表者
- 日立金属株式会社 濱吉 繁幸
共同開発者
- 日立金属株式会社 小川 衛介・清水 健一郎
- 国立大学法人九州工業大学 野田 尚昭
- 独立行政法人産業技術総合研究所 岸 和司
- 日新製鋼株式会社 古賀 慎一
<技術概要説明>
本技術は、鋼板の連続溶融めっきラインにおけるめっき浴中ロール(サポートロール、シンクロール)を オールセラミックスで製造、実用化するものである。
従来のロールは、主にステンレス鋼に溶射したものであるが、高温環境下でのめっき浴との反応、鋼板や軸受との摺動によるロール損耗や肌荒れが発生するため、短期間でラインを停止し、ロールを交換する等、長期連続操業に耐える高信頼性と耐久性を十分満足するものではない。このロールをめっき浴との反応性が低く、耐摩耗性に優れるセラミックスにすることで、ロール寿命延長、鋼板の生産性向上・品質安定化、省エネ、省資源等の効果が期待できる。
本開発では、世界に先駆けて、構造用セラミックスとしては他に類を見ない超大型である浴中ロールのオールセラミックス化を試みた。その結果、サポートロールに加え、シンクロールの製造も可能となり、浴中ロールのオールセラミックス化を実現した。
奨励賞(3件)

開発技術名:ATV ホイール用高機能・低コスト生産技術の開発
開発代表者:ホンダエンジニアリング株式会社 児玉 彰
共同開発者:ホンダエンジニアリング株式会社 垣矢 信行・加藤 育男/株式会社本田技術研究所 半田 秋男・松林 幹政・内田 裕之
開発技術名:鍛造クランクシャフト自動形状検査システムの開発
開発代表者:日産自動車株式会社 飯塚 悟
共同開発者:日産自動車株式会社 塩飽 紀之・山下 寛・神田 和朗 斉藤 雅基・藤川 真一郎
開発技術名:鉄系焼結材用被削性改善添加剤の開発
開発代表者:株式会社神戸製鋼所 田中 浩之
共同開発者:株式会社神戸製鋼所 古田 智之・赤城 宣明・橋本 康宏
開発代表者:ホンダエンジニアリング株式会社 児玉 彰
共同開発者:ホンダエンジニアリング株式会社 垣矢 信行・加藤 育男/株式会社本田技術研究所 半田 秋男・松林 幹政・内田 裕之
開発技術名:鍛造クランクシャフト自動形状検査システムの開発
開発代表者:日産自動車株式会社 飯塚 悟
共同開発者:日産自動車株式会社 塩飽 紀之・山下 寛・神田 和朗 斉藤 雅基・藤川 真一郎
開発技術名:鉄系焼結材用被削性改善添加剤の開発
開発代表者:株式会社神戸製鋼所 田中 浩之
共同開発者:株式会社神戸製鋼所 古田 智之・赤城 宣明・橋本 康宏
