平成23年度 第27回素形材産業技術賞表彰
経済産業大臣賞 「電気自動車用大型リチウムイオン電池ケースの高効率プレス成形技術の開発」
開発代表者
- 久野金属工業株式会社 久野 修 殿
共同開発者
- 久野金属工業株式会社 久野 功雄 殿・岩尾 潔 殿・福安 雄一 殿・水谷 豊 殿
<技術概要説明>
本開発技術は電気自動車用大型リチウムイオン電池ケース(175x45x100mm)を、従来の1/10 のコストで量産を可能にするものである。電気自動車用電池の大容量化が望まれているが、要求強度を満たす大型角電池ケースの成形は、高強度SUS 材の加工が難しく、低コストでの量産化が困難であった。本開発により、SUS430 材の深角絞り加工による大型電池ケースの順送プレス技術を確立して低コスト化を達成した。
高精度な圧力コントロールが可能なCLD(クッションレスダイ)金型、ワレ不良低減と加工速度アップを図る素材流入制御、最適モーションコントロールが可能な超高剛性順送サーボプレス等について技術開発を行った。従来の多工程のプレス加工に比べ、工数削減、材料費低減、生産性向上、不良率低減を実現した。
現在、電気自動車の電池ケースとして月産20万個生産されており、さらに生産拡大が予定されている。今後は、ハイブリッド自動車用電池、太陽光や風力発電用の蓄電池への適用など幅広い用途への活用が期待される。
中小企業庁長官賞 「プリハードン鋳鉄・鋳鋼の開発と実用化」
開発代表者
- 有限会社渡辺鋳造所 渡辺 利隆 殿
共同開発者
- 有限会社渡辺鋳造所 石井 和夫 殿・渡辺 隆介 殿・渋谷 宇一郎 殿・悪原 正敏 殿・山口 友広 殿
<技術概要説明>
鋳物では硬度不良扱いだったマルテンサイト変態を、逆転的発想で耐摩耗性等が優れる高硬度素材に活用する技術である。Ni、Mn 等の化学組成領域を制御して、深冷(サブゼロ)処理のみでマルテンサイト組織に変態し、焼戻し処理による硬さ制御が可能なプリハードン鋳鉄及びプリハードン鋳鋼を開発した。いずれも、高温からの焼入れ処理が不要であること、並びに肉厚感受性の小さいことが大きな特長であり、プリハードン鋳鉄は球状黒鉛鋳鉄以上の、鋳鋼はプリハードン鋼と同等の優れた特性を有する。
プリハードン鋳鉄は、高い耐摩耗性が要求されるマシンルームレスエレベータのシーブ(綱車)やプレス機用カムユニットに使用されている。プリハードン鋳鋼は、プラスチック射出成形用金型材として利用され、さらにダイカスト用金型材への展開が見込まれている。形状自由度が高いという鋳物の特性を活かし、金型に温調配管を鋳ぐるむことが可能で、ハイサイクル化(30%程度)、不良率の低減等が可能になる。
経済産業省製造産業局長賞 「浮動中間型を用いたアルミニウムのプレス鋳造技術の開発」
開発代表者
- 株式会社木村工業 木村 剛 殿
共同開発者
- 株式会社木村工業 佐藤 正美 殿・藤井 敬義 殿・津田 充晴 殿
- 広島県立総合技術研究所 西部工業技術センター 府山 伸行 殿・寺山 朗 殿・藤井 敏男 殿
<技術概要説明>
高生産効率と高品質を実現する、プレス技術と融合した画期的なアルミニウム高圧鋳造装置を開発した。縦型プレス機内に浮動する中間型を持つ3分割の金型を組み込み、型締め動作を利用して溶湯の自然な流れを作り出し、ピストンで加圧するシンプルな機構で、ガス巻込みや鋳巣の発生抑制が可能で、コストパフォーマンスにも優れる。
サーボモータと油圧のハイブリッド加圧機構により、キャビティへの低速層流充填、加圧パターンの任意設定を可能にした。また、中間型押し上げシリンダで、キャビティ充填速度と真空引き速度を同期化する真空減圧成形のため、真空ポンプを要さない。
ダイカストと同等のサイクルタイム(約40sec)で、取り数2倍を実現するとともに、鋳巣欠陥を低減し、強度および伸びのバラつきを1/3以下にするなど品質信頼性を高めた。薄肉平板形状に厚肉配管取り付け部を持つ自動車用油圧部品の量産を開始し、従来の鉄溶接製品と比べ大幅な軽量化と低コスト化を実現した。軽量化、高強度部品への適用拡大と、鋳造装置の普及が期待される。
財団法人素形材センター会長賞 「複合成形金型と金型制御装置を用いた1サイクル2部品同時成形技術の開発」
開発代表者
- ホンダエンジニアリング株式会社 佐々木 静哉 殿
共同開発者
- ホンダエンジニアリング株式会社 児玉 彰 殿・加藤 育男 殿・西田 雅烈 殿・二見 豊 殿 橋本 健 殿
<技術概要説明>
スクーターなどの内蔵燃料タンクはアッパーパネル、ロアパネルと呼ばれる2部品で構成されている。通常各部品は、ドロー(絞り)・トリム・ピアス(穴明け)・リスト(曲げ)などの工程を3工程に振分けて成形を行う。本開発技術はそれらを1工程に集約し、省スペース化することで1サイクル2部品取りを可能にする技術である。
現在、量産に使用するプレス機は3工程1部品毎の生産を前提に導入している。1工程化による1サイクル2部品取りを実現するには、プレスエネルギーの観点から大きなプレス機を導入する必要があった。そこで、小さなプレス機でも成形可能となる、成形中の余分なエネルギーを削減できる複合成形用の金型と金型制御用の汎用装置を開発し、1サイクル2部品取りを実現させた。
この技術は、コスト低減・生産性を向上すると共に、エネルギー・CO2を約40%削減できる環境に配慮した技術である。
財団法人素形材センター会長賞 「複雑立体形状精密部品の順送プレス・自動積層組立ラインの開発 」
開発代表者
- 太陽工業株式会社 小林 信彦 殿
共同開発者
- 太陽工業株式会社 植松 安彦 殿・守矢 正芳 殿・木村 憲市 殿・小平 裕也 殿
<技術概要説明>
スマートフォン等のジョグボールのコア部品である、イガグリ形状の超精密部品を、4部品に分割して成形した後、組立てて製造する技術を開発した。順送プレス加工で異形状の4部品を成形し、4部品がコイル材に付いた状態で洗浄後、材料送り方向に対して材料幅方向に移動するパンチ・圧入ダイで順次、組込む。従来の手作業における部品の脱落、斜め圧入等の問題は、画像センサーと位置センサーの検知によって解決し、高精度化と歩留まり向上を実現した。
複雑立体形状の4部品を同一型内で作製し、洗浄、自動積層組立まで を行う順送一貫ラインにより、従来の手作業に比べ、高精度複雑形状部品 の生産性が60倍に向上するとともに、省力化、低コスト化が図られた。 切削加工等によらざるを得なかった高精密な複雑立体形状部品を高効率 生産する技術、及び異材質・材厚の部品をライン内で組立てる技術への 展開が期待される。
財団法人素形材センター会長賞 「高耐久性ハイテンプレス成形金型用表面処理技術の開発」
開発代表者
- 株式会社神戸製鋼所 久本 淳 殿
共同開発者
- 株式会社神戸製鋼所 山本 兼司 殿・熊切 正 殿・尾崎 勝彦 殿
- 日本高周波鋼業株式会社 菓子 貴晴 殿
- 株式会社カムス 高沢 友康 殿
<技術概要説明>
自動車軽量化に対応し高強度鋼板の使用が拡大する中、590~780MPa級以上の冷間プレス成形では金型損傷が早期に発生し、生産性低下・コスト増が課題となっていた。
金型損傷機構を解明するとともに、熱歪の影響が小さいAIP(Arc Ion Plating)による高耐久性表面処理技術を開発した。AIPによるコーティング膜は、高耐酸化性と高硬度を兼備させ、母材との密着性を向上させる2層構造として、高面圧下での高耐久性を実現した。皮膜処理温度は400~450℃と低いため、金型熱歪みを低減でき、仕上げ工程を削減可能で、短納期、コスト低減、省エネルギーに貢献する。
足廻り部品とシャシー部品のハイテン鋼板プレス用金型に採用され、従前比約10倍の安定寿命が確認されている。ハイテン鋼板の適用拡大において金型長寿命化に貢献すると期待される。
奨励賞(5件)
開発技術名:精密金型用高機能成膜技術の開発
開発代表者:ナノテック株式会社 中森 秀樹 殿
共同開発者:ナノテック株式会社 平塚 傑工 殿
開発技術名:三相誘導モータ用純銅ロータのダイカスト技術の開発
開発代表者:株式会社明石合銅 明石 隆史 殿
共同開発者:株式会社明石合銅 小杉 良一 殿・牧野 一樹 殿
開発技術名:ハイサイクル成形に対応した高性能ダイカスト金型材料の開発
開発代表者:日立金属株式会社 山口 基 殿
共同開発者:日立金属株式会社 片岡 公太 殿・中津 英司 殿・長澤 政幸 殿・田村 庸 殿
開発技術名:ダイカスト用内蔵型真空バルブの開発
開発代表者:リョービ株式会社 喜多村 光朗 殿
共同開発者:リョービ株式会社 水草 康行 殿・今川 洋一 殿・田尾 大輔 殿
開発技術名:半凝固アルミ鍛造製法による肉厚変化を有する容器成形技術の開発
開発代表者:合志技研工業株式会社 山田 敏雄 殿
共同開発者:合志技研工業株式会社 本多 利光 殿・佐々木 勉 殿・松尾 司 殿/住友電工ファインポリマー株式会社 羽深 正弘 殿/魚岸精機工業株式会社 山崎 信洋 殿
開発代表者:ナノテック株式会社 中森 秀樹 殿
共同開発者:ナノテック株式会社 平塚 傑工 殿
開発技術名:三相誘導モータ用純銅ロータのダイカスト技術の開発
開発代表者:株式会社明石合銅 明石 隆史 殿
共同開発者:株式会社明石合銅 小杉 良一 殿・牧野 一樹 殿
開発技術名:ハイサイクル成形に対応した高性能ダイカスト金型材料の開発
開発代表者:日立金属株式会社 山口 基 殿
共同開発者:日立金属株式会社 片岡 公太 殿・中津 英司 殿・長澤 政幸 殿・田村 庸 殿
開発技術名:ダイカスト用内蔵型真空バルブの開発
開発代表者:リョービ株式会社 喜多村 光朗 殿
共同開発者:リョービ株式会社 水草 康行 殿・今川 洋一 殿・田尾 大輔 殿
開発技術名:半凝固アルミ鍛造製法による肉厚変化を有する容器成形技術の開発
開発代表者:合志技研工業株式会社 山田 敏雄 殿
共同開発者:合志技研工業株式会社 本多 利光 殿・佐々木 勉 殿・松尾 司 殿/住友電工ファインポリマー株式会社 羽深 正弘 殿/魚岸精機工業株式会社 山崎 信洋 殿
