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III.鋳造基礎・初心者コース

【第1部】鋳鉄の材質及び基礎技術

1-1.鋳鉄の組織と材質評価

<講義内容>
  1. 鋳鉄の特徴
    鋳鉄と鋼の違い、鋳鉄の特性、鋳鉄の分類

  2. 鋳鉄鋳物の材質に影響を与える因子
    組織、鋳造欠陥、鋳造応力について

  3. 鋳鉄の凝固過程と組織
    亜共晶組成と過共晶組成の鋳鉄の凝固過程、ねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)と白鋳鉄の凝固について

  4. 鋳鉄の主要組織
    黒鉛形態の分類、主要な基地組織の特徴

  5. 鋳鉄の材質と化学組成及び組織との関係
    炭素飽和度(Sc)、炭素当量(CE)、成熟度(RG)、比較硬さ(RH)による材質評価、機械的性質に及ぼす共晶セル、鋳物肉厚、接種、黒鉛球状化率の影響
講師名
近畿大学 理工学部 教授 米田 博幸

1-2.ねずみ鋳鉄の材質と用途

<講義内容>
鋳鉄は主に炭素(C)と珪素(Si)からなる鉄合金のことで、これを溶解し、鋳造することによって得られたものを言う。
なかでも、ねずみ鋳鉄は機械的性質と密接な関係を持つ組織が化学成分、特に炭素、珪素の量および凝固条件によって著しく異なる。
ここでは、機械的性質に関係の深い各構成相の性質および相の形状、大きさ、組織分布について講述し、用途展開を探る。
講師名
大阪産業大学 工学部 教授 松本 弘司

2.球状・CV黒鉛鋳鉄の材質と用途

<講義内容>
  1. 球状黒鉛鋳鉄とは何か
    その歴史、生産量、主な用途、顕微鏡組織

  2. 黒鉛の球状化理論
    球状黒鉛の発生機構と成長機構に対する種々の理論について

  3. 球状黒鉛鋳鉄の化学組成
    球状黒鉛鋳鉄の標準化学組成、各種球状黒鉛鋳鉄の化学組成例、黒鉛球状化に及ぼす各種元素の影響と球状化阻害元素の分類

  4. 黒鉛球状化率の算出方法
    黒鉛形状の分類、JIS規格による黒鉛球状化率の算出

  5. 主な鋳造特性
    ひけ性、湯流れ性、チル化傾向、肉厚感受性について

  6. 機械的性質
    JIS規格による球状黒鉛鋳鉄の種類と機械的性質、黒鉛球状化率と機械的性質、基地のフェライト及びパーライト面積率と機械的性質、球状黒鉛鋳鉄の応力―ひずみ曲線、引張強さと伸び及び硬さの相互関係、衝撃遷移特性、破壊じん性、球状黒鉛鋳鉄の破壊過程、高温での機械的性質など
講師名
近畿大学 理工学部 教授 米田 博幸

【第2部】鋳鉄溶解の基礎

1-1.鋳鉄溶解の基本・誘導炉溶解とキュポラ溶解

<講義内容>
  1. 誘導炉溶解の基本
    誘導溶解炉の種類、特徴、構造について解説し、低・高周波誘導炉で溶製される鋳鉄溶湯の性状と溶湯管理、誘導炉溶解の基本的な事項について講述した。

  2. キュポラ溶解の基本
    キュポラの主要構造と標準操業法、炉内雰囲気、コークス、造滓剤、地金、鉄合金について講述した。
講師名
近畿大学 理工学部 教授 炭本 治喜

1-2.誘導炉溶解の実際

<講義内容>
誘導炉の構造と特徴について、ライニング材と築炉方法および溶解作業の実際を現場操業記録と作業工程表によって説明するとともに、各社の通過トン数と電力原単位および安全操業のポイントを、実際例を上げて説明する。
また、高周波炉と低周波炉およびキュポラ、アーク炉との二重溶解についてコスト比較をする。
さらに、溶解方法の違いによる湯面模様など、溶湯性状(強度、チル、湯流れ、引け)を比較して説明する。
講師名
シンワエンタープライズ(株)鋳造製品素材部 部長 佐々木 裕

2.キュポラ溶解の実際

<講義内容>
  • キュポラのサイズ別の設置例を用いて説明
  • 一般的な操業(立ち上げ時、安定時、吹下ろし時)状況の写真例を説明
  • キュポラへ装入された材料が炉内でどのように溶けていくか、また溶湯とスラグに変化するかを説明
  • キュポラの炉底構造としてウェットボトム(フロントスラッギングとリアスラッギング)、ドライボトムの説明
  • キュポラ炉内から溶湯とスラグが出てくるメカニズムを圧力バランスをポイントに説明し、出湯樋から安定した溶湯が出るための“X値”の意味及び計算方法について説明
  • キュポラ操業において大型化へ移行したポイントを実際の写真例を用いて説明
  • キュポラ操業における長時間操業(出湯状況、ドレンアウト状況、操業後の炉内状況)を写真を用いて説明。操業での問題発生におけるトラブル例を説明
  • キュポラ排ガスを有効利用する熱風操業の重要性と、熱風発生装置が時代のニーズと共に開発された例を説明し、溶解設備から排出されたエネルギーを利用する設備例を説明
  • 現在の鋳造業を取り巻く環境に対してキュポラ溶解技術が担う課題及び実施例を説明
講師名
(株)ナニワ炉機研究所 専務取締役 製造部長 村田 博敏

【第3部】鋳造方案の考え方と欠陥対策及び仕上げ

1-1.鋳仕上げの現状と動向

<講義内容>
鋳仕上げは、鋳物工場の生産の中で最も合理化が遅れている分野である。その理由は、鋳造品により作業内容が異なっており、又、生産においても多品種少量生産の場合には工程が一定化しにくいためである。
したがって、鋳上げの合理化を行う場合には、生産形態(少品種多量生産、多品種少量生産)、規模、造型法(生型自動ライン、自硬性鋳型など)、材質(ねずみ鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、可鍛鋳鉄など)、寸法精度などを十分に考慮した上で設備の合理化を検討する必要がある。ここでは鋳仕上げの工程毎に合理化及び改善実施例を主体に報告する。
講師名
大銑産業(株)鋳物事業本部 取締役 技術部長 芝 重和

1-2.鋳造方案の考え方・凝固解析を含む

<講義内容>
鋳造方案の図解と、方案特有の用語の説明と、不良率低減のためになぜ方案が重要かを解説。
従来の方案決定の具体的な方法と方案の各パートが果たす役割を科学的にわかりやすく解説し、これにより合理的な鋳造方案を決定する上での要因に対する理解を深めるようにしている。また、短時間に決定する上で大きく寄与している、凝固解析の原理と、現在の状況および利用上の注意などに触れ、具体的な事例を紹介している。
講師名
大阪大学 大学院 工学研究科 助教授 山内 勇

2.鋳造欠陥とその防止対策

<講義内容>
  • キュポラのサイズ別の設置例を用いて説明
  • 一般的な操業(立ち上げ時、安定時、吹下ろし時)状況の写真例を説明
  • キュポラへ装入された材料が炉内でどのように溶けていくか、また溶湯とスラグに変化するかを説明
  • キュポラの炉底構造としてウェットボトム(フロントスラッギングとリアスラッギング)、ドライボトムの説明
  • キュポラ炉内から溶湯とスラグが出てくるメカニズムを圧力バランスをポイントに説明し、出湯樋から安定した溶湯が出るための“X値”の意味及び計算方法について説明
  • キュポラ操業において大型化へ移行したポイントを実際の写真例を用いて説明
  • キュポラ操業における長時間操業(出湯状況、ドレンアウト状況、操業後の炉内状況)を写真を用いて説明。操業での問題発生におけるトラブル例を説明
  • キュポラ排ガスを有効利用する熱風操業の重要性と、熱風発生装置が時代のニーズと共に開発された例を説明し、溶解設備から排出されたエネルギーを利用する設備例を説明
  • 現在の鋳造業を取り巻く環境に対してキュポラ溶解技術が担う課題及び実施例を説明
講師名
(株)クボタ 教育センター 主席講師 和気 慎

【第4部】造型技術の基礎

1-1.生型造型法・鋳物砂の特性と管理

<講義内容>
  1. 生型造型法の概要
    量産型鋳物生産の主流を占める生型造型法についてその特徴及び造型機等の概要を説明

  2. 鋳物砂の性質
    生型用鋳物砂に必要な性質、及び鋳物砂を構成している造型材料の役割と適正な配合について説明

  3. システムサンドの考え方
    生型鋳造ラインにおけるライン砂について、一般的に管理すべき特性値と管理方法、砂試験項目を説明。又、砂に起因する不良と対策、及び自動化ラインにおける管理ポイントについて、過去の失敗等を踏まえて事例を紹介
講師名
(株)クボタ 恩加島工場 製造第2課長 辻 聰

1-2.自硬性鋳型(無機系と有機系)と鋳型材料

<講義内容>
鋳型は、混練から始まる造型工程を経て、最終的には溶湯の鋳込みによって高温で物理的あるいは化学的な影響を受ける。高品質で高精度な鋳物製品を得るために鋳型が具備すべき条件ならびに骨材である砂に要求される特性について述べる。
次に無機系と有機系の各種鋳型について、粘結剤及び硬化剤による分類とその特性を説明する。現在までに種々の造型法が考案されており、それぞれの特長を生かした分野で活用されている。
講師名
山川産業(株)技術部 次長 易 宏治

2.消失模型鋳造法

<講義内容>
発泡模型を生砂中に埋没させて、それに直接鋳造するキャビティーレス(cavity-less)鋳造法が1958年にH.F.Shroyerによって開発され、T.R.Smithによって無粘結砂を使用する現在のような消失模型鋳造法が1964年に開発された。
近年、自然と人の生活を調和させて、環境に優しい「物造り」が叫ばれ、環境に配慮した「物造り」が提唱されている。消失模型鋳造法では鋳物にバリの発生がなく、工程数も簡素化され、鋳仕上げも容易であり、加えて鋳造周辺から発生する廃砂を中心とした産業廃棄物の発生量がきわめて少ない。いわば消失模型鋳造法は環境に易しい鋳造法であるといえよう。このような観点から、消失模型鋳造法の利点を、鋳物の設計段階から反映させる必要があろう。
講師名
関西大学 工学部 教授 小林 武

【第5部】情報の基礎、品質管理及び規格の基礎

1.生産情報システムの基礎と応用

<講義内容>
これからの企業は、株主、顧客、従業員、地域社会などの利害関係をバランスよく考慮しつつ、情報化の進展やコンペティションという経営環境変化に対応していかなければならない。そのためには、アナログとデジタルの融合を指向した中核能力を増幅させるための生産情報システムを構築する必要がある。具体的には、新しい顧客との関係管理のためのCRM、価値連鎖の一端を担いアジル・マニュファクチャリングを可能にするSCM、3Dモデルを駆使したデジタルマニュファクチャリング、知的資産管理のためのナレッジマネジメントを実現したい。デジタルマニュファクチャリングでは、形状モデル、物理現象モデル、データモデル、活動モデルを扱うシステムの整備が不可欠である。生産情報システムは、効率化と知的資産管理にも寄与できなければならない。各企業において残すべきものと変えるべきものを区別し、常に進化していく仕組みづくりも重要である。
講師名
甲南大学 経営学部 教授 長坂 悦敬

2-1.品質管理入門・ISO9000'sの紹介を含む

<講義内容>
日本製品の品質の高さは世界中で高く評価されている。高品質を支えている管理方法の一つに品質管理がある。ここでは品質管理手法として、広く使われている「QCの七つ道具」(チェックシート、パレート図、グラフ、特性要因図、ヒストグラム、散布図、管理図)の基礎を紹介すると共に、その使い方を説明する。また、品質に関する国際規格であるISO9000,s(品質マネジメントシステム)についても概説する。
講師名
元(株)栗本鐵工所 加賀屋工場 ISO推進室長 鈴木 拓司

2-2.生産技術者に必要なJIS規格

<講義内容>
工業の発展に工業製品の規格化は必須である。生産者は規格に則った製品を造ることが必要条件である。この講義では鋳鉄生産者が関係する規格のうち、構造部材としての鋳鉄品について定められているJIS(日本工業規格)を解説し、鋳鉄に求められている規格が約5年の改正ごとに厳しいものとなっていることを示す。そして、その評価方法として同じくJISに規格化されている材料試験法の原理と実際の利用法を解説する。
講師名
大阪府立大学 大学院 工学研究科 助教授 辻川 正人
一般財団法人素形材センター
〒105-0011
東京都港区芝公園3-5-8機械振興会館301号室
TEL.03-3434-3907
FAX.03-3434-3698
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