本文へ移動

V.金型コース

【第1部】ダイカスト用金型技術

1.ダイカスト用金型技術の展望と新技術動向

<講義内容>
  1. ダイカストは金型にアルミニウム、亜鉛、マグネシウムなどの金属の溶湯を圧入して、形状精度、表面性状の優れた鋳物を量産する鋳造方式をいい、またダイカスト鋳造法により生産された部品を呼ぶこともある。
  2. 金型表面は、幾何学的に単純な平面から、微分幾何学的に表現される自由曲面までの多くの面要素をつなぎ合わせて創成されるため、CAD/CAE/CAMで設計・加工される。
  3. 金型のキャビティ内に溶融合金を高圧で圧入し、さらに保圧をかけて封止し、冷却によりキャビティ形状を正確に転写・固化する機能が必要である。また溶融軽金属を迅速に固化・硬化するために、ダイカスト金型には優れた熱交換機能が要求される。
  4. 溶融金属が金型加工面と高温・高圧で接触し、さらに高速で摺動するため、金型の摩耗が生じる。金型寿命を伸ばし、サイクルタイムを短縮するために、金型保全技術と型替えの段取り技術が必要である。
講師名
(株)ぐんま産業高度化センター 斎藤 勝政

2.金型材料、熱処理、表面処理

<講義内容>
“適材適所”という言葉通り、金型材料は、その用途により様々なものが開発されている。
それに伴い、材料の特性を左右する熱処理や金型表面で発生するトラブルを防ぐ表面処理の分野も日進月歩で発展している。
こうした材料・熱処理・表面処理の選択の際に重要となるのは、金型で発生するトラブルを把握することである。
ここでは、ダイカスト金型に起こる一般的なトラブルを実際の解決事例を交えて解説している。
また、現在使用している材料・熱処理・表面処理の特性についても触れている。
講師名
リョービ(株) 有須田 康弘

3.鋳造シミュレーションの基礎

<講義内容>
ダイカストの湯流れや凝固現象をCAE(Computer Aided Engineering)により可視化可能となり、設計段階での方案検討により試作のためのコスト、時間を大幅に削減可能となってきている。
本講義では、鋳造シミュレーションの基礎的な事項の解説およびダイカスト部品への適用例について説明している。さらに最新技術として、最適鋳造条件を自動的にシミュレーションにより導き出すCAO(Computer Aided Optimization)の事例について紹介している。
講師名
(株)日立製作所 高橋 勇

4.金型設計 CAD/CAM/CAT

<講義内容>
3次元CADを用いた製品設計が広まる中で、金型のコスト削減、品質向上、納期短縮を進めるためには、CAD/CAM/CATの効率的な活用が不可欠である。
本講義では、まずCAD/CAM/CATに関する基礎知識を確認する。3次元形状データは、CAEの適用が容易である等の利点が多くあるが、2次元データに比べ設計意図が表現しづらいといった欠点もある。このため、3次元データを取り扱う上での各種ルールづくりを行い、役割分担を明確にする必要がある。
次にCAD/CAM/CATを用いた金型設計の具体的手順を示す。金型の納期を短縮し、かつ品質向上を図るためには製品設計と同時進行で生産要件を3次元形状に織り込む必要がある。この際にCAEの適用が不可欠となる。
本講義では、CAD/CAM/CATの適用のねらいと具体的活用方法について述べる。
講師名
日産自動車(株) 安達 篤

5-1.金型加工

<講義内容>
本講義では、実際の金型造りの現場事例を多用してわかり易くすると共に、金型の生産システムまで踏み込んだ解説を加える事によって、中堅技術者はもとより管理・監督者が見ても役立つ内容としている。
  1. おも型加工
    CADデータの活用等、早く・正確におも型を加工するポイントを中心に解説。
  2. 入子&中子加工
    技術力・設備を生かした工法の選択の重要性と、基本となる三つの工法「直彫法」「総放電法」「複合法」について、それぞれの特長・優位点・問題点を解説。ここでは、主に「総放電法」の事例を中心に紹介。
  3. 金型製作工期の短縮
    「一型流し生産システム」によって実現した工期短縮の事例として、基本的考え方と取り組みのポイントを実際の効果とともに紹介。
講師名
シンコー精機(株) 新名 俊一

5-2.機械加工

<講義内容>
大幅なリードタイム短縮のためには磨き工程、手仕上工程を不要、または減少させるほどの高精度な加工が高硬度材においても必要となる。工作機械の精度は最近かなり向上しているが、機械加工の精度は従来加工では不十分である。
FF加工は納期とコストを大幅に削減するために考えられた切削の分野での加工方法であり、精度と品位を向上し、また加工対象を一般材料から高硬度材まで拡大したものである。
加工精度の劣化の主な要因はつぎの3点にある。
  1. 切削工具の摩耗および損傷による加工精度の劣化と仕上面の劣化
  2. 切削熱による工具および工作物の熱変形による精度劣化
  3. 切削負荷変動による工具の変形量の変化による精度劣化
これらの問題を最小限に抑えた加工方法<FF加工>を紹介する。
講師名
(株)牧野フライス製作所 小林 義高

6.金型設計

<講義内容>
まず、ダイカストの種類についてアルミニウム、亜鉛、マグネシウムそれぞれの基本的な金型構造、名称と各合金の違いによる金型構造の特徴について説明する。またアルミニウム、亜鉛、マグネシウムの各合金の種類と用途、及び縮代についても具体例を挙げ説明する。
つぎに、設計手順として、仕様の決定、基本設計、金型の大きさの決定、鋳造機の選定等につき具体例やポイントについて述べる。
また詳細設計についても金型分割面の決定、アンダーカット処理、鋳造方案、冷却方案等についても実例を挙げ説明をする。更に量産性、保全性を考慮した設計例も取り上げる。
講師名
リョービ(株) 稲葉 定夫

【第2部】鍛造用金型技術

1.冷間鍛造品の工程設計と金型設計

<講義内容>
冷間鍛造は加工圧力が高く、パンチやダイなどの主要な型部品には型材料の耐力に近い高圧が作用し、型には過酷な加工法といえる。そのため、型に作用する圧力を低下させることは重要である。パンチ、ダイのコーナー丸み、面の傾き等の僅かな変化も圧力低下に有効である場合は多い。また金型材料は圧縮に比べて引張強度は低いため、引張応力が作用する部分を分割型構造にする、あるいは補強リングによる締り嵌め構造にし、予圧縮圧力を作用させるなどの型設計が行われている。鍛造品精度には金型、素材、潤滑、鍛造機械などの多くの因子が複雑に影響し、今日でも高度な技術は、経験に依存していると言える。講師は現場の経験から得たノウハウをもとに、冷間鍛造金型の設計指針を体系的に述べている。
講師名
元冷間鍛造(株)社長 澤辺 弘

2.金型材料、製作、熱処理、表面処理

<講義内容>
冷間鍛造金型は微小なクラックが成長して割れて寿命になることは多い。金型は強度を高めるために焼き入れて高硬度にするが、クラックの成長を抑えるためにはじん性が高いことが望まれる。しかし、一般には硬さとじん性とは両立しない。どのような考え方で金型材料を選択し、特性を整えれば良いか、現場での経験をもとに、冷間鍛造をするために必要な金型材料の特性について述べる。また、開発が進んでいる超硬合金について説明する。
講師名
元冷間鍛造(株)社長 澤辺 弘

3.金型設計・製作評価の実際とコンピュータ活用

<講義内容>
金型仕様の打合せは、金型の初期破損並びに事後の修正がないようにすることが大切である。金型破損及び鍛造品欠陥が生じない金型設計をするためには、金型に作用する応力及び鍛造材料の塑性流動等を予測する必要がある。コンピュータシミュレーションを活用して、こうした問題に対処し、スピードギア及びベベルギア冷間鍛造金型を設計した事例を説明する。シミュレーション結果を解説しながら、金型の設計指針、金型材料の選択、型の補強、表面処理方法などについて説明する。更に、金型の補正技術及び製作法に言及する。
講師名
(株)ヤマナカゴーキン 技術部 シニアマネージャー 角南 不二夫

4.熱間鍛造品の工程設計と金型設計

<講義内容>
鍛造設計は鍛造機械を選定し、素材寸法を決めることから始まる。ネットシェイプ部品を鍛造するためには、数工程に分けて鍛造が行われるが、最初のブランク成形工程は重要で、ブランク形状不整を後の工程で修正することは極めて困難である。従って、使用する鍛造機械の種類及び鍛造品の寸法・形状等に適した工程を設定して、金型を設計しなければならない。また最近では熱間鍛造したブランクを冷間鍛造で仕上げる、いわゆる複合鍛造によりトランスミッションギアを精密鍛造することも行われている。こうした鍛造金型の設計ノウハウを現場における経験をもとに講義する。
講師名
(株)メタルアート 専務取締役 長谷川 平一

5.鍛造の世界と特徴及び新しい鍛造技術

<講義内容>
最近、鍛造品に要求される品質及び寸法精度は高まり、いわゆるネットシェイプであることが求められます。これを実現するため、金型は一層過酷な条件下で使用される傾向にあり、対処するには、鍛造メタルフローの特徴を理解した上で金型設計をし、また新しい鍛造方法を考案することが重要である。
そこで、基本的鍛造塑性変形である据込み、押出し及び組合せ押出しにおけるメタルフローの特徴を塑性力学的に説明し、また、押出し圧力の計算方法を解説する。更に、新しい鍛造技術である閉塞鍛造及び背圧付加鍛造法の変形のメカニズム及び特徴をわかり易く講義する。
講師名
産業技術総合研究所 篠崎 吉太郎

6.金型損傷の原因と対策

<講義内容>
ネットシェイプ部品を鍛造するためには、金型に損傷や摩耗があることは許されず、金型の寿命の基準は厳しく設定されることとなる。厳しい寿命基準に対して金型寿命を向上させるためには、金型の損傷の原因を特定したうえで、金型材料の種類、金型材料の特性、表面処理法、潤滑剤、鍛造工程などを見直すこととなる。クランクシャフトやデフギアなどの主要な自動車部品の鍛造加工事例において、金型損傷を回復して寿命を向上させた過程を鍛造条件と共に詳細に説明する。
講師名
日産自動車(株)パワートレイン生産技術本部 成形技術部型製作課 主査 濱崎 敬一

【第3部】射出成形用金型技術

1-1.高機能金型と金型保全システム光造形技術の利用

<講義内容>
  1. 金型は転写技法を用いて形状加工を行うための工具(mother tool)である。溶融した樹脂を金型のキャビティに注入し、冷却・固化させる工程で、プラスチック部品を高精度で能率よく、迅速かつ安く製造できるため、広い産業分野で利用されている。
  2. 形状が賦形されたプラスチック部品を取り出すために、金型は固定側型と稼働側型の2つにパーティング面で割られる構造を持ち、溶融樹脂を高圧で注入する時は、大きな型締め力で固定される。
  3. 溶融された樹脂を固化するために冷却機能が必要であり、成形サイクルを短縮するため、高い熱交換機能が要求される。
  4. プラスチック部品の表面形状が幾何形状と30%の自由曲面で構成されているため、金型キャビティ表面の創成と設計には3次元CADが必要であり、NC加工するためにCAM機能が必要である。
  5. 金型が高温、高圧にさらされ、溶融樹脂と接触するために金型加工面の摩耗が激しく、さらに表面性状がプラスチック部品の品質を決定するため、金型の保全が常に必要である。
  6. CADで設計された形状を認証し、作られた部品の動作機能を確認するために、光造形法による形状創成技術が必要である。
講師名
(株)ぐんま産業高度化センター 斎藤 勝政

1-2.金型用材料

<講義内容>
金型には特殊鋼の一つである工具鋼が用いられる。初めに普通鋼と特殊鋼の相異および工具鋼の分類について説明。その後、プラスチック金型材に要求される基本特性(物理的性質、硬さ、耐摩耗性,耐食性など)および型製作上要望される特性(被削性、放電加工性、鏡面性、シボ加工性など)に分けて解説する。
次に、プラスチック金型に用いられる金型材料の種類、成分、特性比較、さらに金型材料の選択方法を述べた後、その製造方法、検査方法、材料欠陥の発生とその対策等について説明する。
最後に金型性能を確保するための金型材料の熱処理(特に焼入れ、焼戻し)の原理、重要性を解説し、プラスチック金型に適用される表面処理の種類とその内容についても付言する。
講師名
大同特殊鋼(株) 並木 邦夫

2.切削加工

<講義内容>
大幅なリードタイム短縮のためには磨き工程、手仕上工程を不要、または減少させるほどの高精度な加工が高硬度材においても必要となる。工作機械の精度は最近かなり向上しているが、切削加工の精度は従来加工では不十分である。
FF加工は納期とコストを大幅に削減するために考えられた切削加工方法であり、精度と品位を向上し、また加工対象を一般材料から高硬度材まで拡大したものである。
加工精度の劣化の主な要因はつぎの3点にある。
  1. 切削工具の摩耗および損傷による加工精度の劣化と仕上面の劣化
  2. 切削熱による工具および工作物の熱変形による精度劣化
  3. 切削負荷変動による工具の変形量の変化による精度劣化
これらの問題を最小限に抑えた加工方法<FF加工>を紹介する。
講師名
(株)牧野フライス製作所 小林 義高

3.仕上げ加工

<講義内容>
射出成形用金型加工において、仕上は最終の工程になるので、金型の品質を決める重要な工程になる。仕上工程は次の項目に分けられる。
  1. 機械加工後の修正加工
  2. 磨き加工
  3. 合わせ加工
  4. 組立
  5. 検査
機械加工の精度が高く、表面粗さが小さければ、機械加工後の修正や磨き、合わせの工程は容易になり、あるいは省略されることもある。多くの種類の工具とダイスポッターなどの装置を使用する工程であるが、手作業に頼る内容が多い。できるだけ機械加工で精度と粗さを追求して、仕上加工に残す加工量を小さくしなければならない。手作業の内容も科学的に分析し、標準化によって安定した能率の良い作業を定着させることが重要である。
仕上作業者は、金型の品質に関して充分な知識を持ち、出荷する金型の品質を確保しなければならない。
講師名
日本工業大学 機械工学科 佐々木 哲夫

4.金型の可視化技術と成形現象の解析

<講義内容>
金型の可視化技術として、金型の外から内部をビデオカメラで撮影する動的な可視化技術と、材料に着色等のマーキングを施してキャビティ充填後の成形品断面観察を行う静的可視化技術について取り上げ、その発展の歴史とともに、技術の構成要素にしたがって個別の可視化技術を順に紹介する。また、具体的に動的可視化手法の中から、プリズムインサート金型を取り上げてその型構造と適用時の注意事項を詳述し、それによる可視化解析事例として、ランナーバランス、ウェルドライン、シルバーストリーク、ボイド、フローマーク、焼け等の生成現象について順次解説を加える。さらに、静的な可視化手法の中からゲート着磁法と取り上げてその型構造を詳述し、同様にして、充填速度の影響や角部の充填挙動、両端部先行流れ現象等の可視化解析結果を解説する。
講師名
東京大学 国際産学共同研究センター 横井 秀俊

5.CAEとシミュレーション

<講義内容>
射出成形解析は構造解析と並んで最も広く使われている解析技術の分野であるが、実際の金型設計や成形現場で、判断を誤ることなく効果的に活用するには樹脂の物理的な性質と数値解析の手法からくる限界をきちんと理解していることが望ましい。
本講義では、射出成形解析を進めるにあたっての樹脂と金型の熱的性質の理解と冷却解析の事例について解説する。次に樹脂の粘性流体としての理解と樹脂流動解析について、数値解析理論も含め紹介し、さらに、射出成形品の反り収縮の原因と解析手法、解析結果と実験結果との比較した事例を解説する。
最後に実際の金型開発や成形の現場で、解析技術をうまく活用してゆくうえでの注意点や限界について述べる。
講師名
松下電器産業(株) 有吉 秀穂

6.三次元計測とデータ処理技術

<講義内容>
本講義では、「三次元計測とデータ処理技術」について解説する。初めに、生産プロセスにおける計測の位置づけおよび役割について述べる。次に、測定機に関するアッベの原理を説明し、三次元測定機活用の効果や三次元測定機の構造を述べるとともに、接触式測定子(プローブ)ならびに非接触式測定子(光学接触)の特徴・問題点を説明する。三次元測定機を用いなくとも使用目的によっては加工機上での計測が可能であることを述べ、同手法がオンマシン計測として位置づけられることを説明する。高速高密度測定法として有効である各種画像計測法について特徴を示す。また、物理モデルからその測定データを利用してCADモデルを構築する手法であるリバースエンジニアリングについても概説する。
講師名
慶応義塾大学 理工学部 青山 英樹
一般財団法人素形材センター
〒105-0011
東京都港区芝公園3-5-8機械振興会館301号室
TEL.03-3434-3907
FAX.03-3434-3698
TOPへ戻る